[目   次] [前ページ] [次ページ]

[第4部・いき・息・粋]


「瞬間」と「瞬間」が結び合って、
神楽の物語は仕上がっていく。
神楽は、その舞いの中に観客を魅せる瞬間を
いかに多く持つかである。
そしてそれは、観客が舞人の芸に対して「粋」を感じる瞬間でもある。
今や、それで評価が決まるほど神楽は芸術性を持ってきた。
「息がピタッと合った」瞬間はもちろんのこと、
手に持つ採物の位置やお互いの顔の向きが揃い、
そして最も大切なことは、
複数の舞人の眼が同じ「心」を表わし、
同じ「情熱の炎」を燃やしている瞬間なのである。
もちろん観客も受け止め手であり、
おのずから神楽に引き込まれていくのである。
そして、その瞬間「静」から、次の瞬間「動」に移るまでの
僅か数秒あるかないかの「間」は、
神楽を取り巻くすべての空間を止めてしまうほどの
不思議な力を持っていて、思わず身震いしてしまう。
美しき妖しき姫たちの舞が少し乱れたかに見えるや否や
振り向き様には夜叉になって観客に迫る。
など、観客が我が眼を疑う瞬間である。
まさに「間」が「魔」に通じると言われる所以であろう。
観客すべては、次の瞬間に向かって
更に大きな期待を抱き、舞台を凝視する。
神楽人たちは、この「一瞬」のために、
どけだれの練習を積み重ねてきただろうか。
神楽団の歴史、伝統に裏付けられた最高の技術で
観る者へ挑んできている気がしてならない。
息がピタッと合った。
観客は拍手喝采である。


Zero One Corporation